歪んだ愛しさ故に
「………いない…」
真っ直ぐ向かった、拓のマンション。
押したインターフォンには、誰も出る気配はなかった。
まだ会社にいるのだろうか。
とりあえず携帯を取り出して、通話ボタンを押した。
《………はい》
意外にも、その電話にすぐに応答した拓。
ちょっと予想外だったので、つい声が上ずってしまった。
「もし、もし……」
《琴音?どうした?》
受話器から聞こえる、拓の声。
なぜか、優しく聞こえるその声に、胸が勝手にときめいた。
今すぐ伝えたい。
だけど電話なんかじゃ嫌。
「…………会いたい、です……」
この気持ちだけは、会って直接伝えたいから……。