歪んだ愛しさ故に
拓は改札から少しだけ離れた場所の壁によりかかって、寒そうに両手をコートのポケットに突っこんでいる。
多分、見る限り、葵さんには会っていないようだ。
声をかけるべきか……。
まだまだ離れた距離にいるので、拓があたしの存在に気づくことはない。
会いたくて追いかけてきたはずなのに
急激に足がすくむ。
迷惑かも……という思いや
うざがられる……という不安。
こんなふうに、誰かを追いかけるなんて、生まれて初めてしたせいか
ここから先の行動をどうしたらいいのか分からなかった。
だけどそのとき……
「ぁっ……」
拓が動き出した。
思わず、小さな声をあげると、
スタスタと歩き出していく拓の姿を目で追う。
そしてその先に……
彼女がいた。