歪んだ愛しさ故に
「琴音のことは、後悔したくなかったから……。
絶対に手離したくなかったから……。
だけどなかなか素直になれなかったのは、やっぱり自分の過去があったから。
ちゃんと葵に謝ってこないと、俺なんかが普通の恋愛なんかしちゃダメだって思った」
あたしの知らない、拓と葵さんの過去……。
きっとそれは、誰にも言えない深い傷を負うもので……
二人の中で消化されたのなら、あたしが聞く必要のないもの。
「だからちゃんと謝ってきた。
もう俺を引き留めるものは何もないから……。
……琴音」
真っ直ぐと向き直って、
柄にもない真剣なまなざしをあたしに向ける。
その顔は、ほんの少し照れているようで、頬が赤いのは寒さのせいだけじゃない。
「お前が俺を好きになるまで、今度はとことん攻めるから。
まわりくどいことなんかしない。
ストレートに好きって言葉も伝える。
だからそこを、覚悟しとけよ」
最後はニヤリと微笑んで、いつもの拓の顔になった。