歪んだ愛しさ故に
18章 彼の過去
「俺さ……」
暗がりの部屋の中。
煙草を吸い追いえた拓が、灰皿へと煙草を押し付けると、言葉を切り出した。
ここは拓の部屋。
あたしの部屋と違って、ベランダで吸うようなことをしないので、部屋の中は煙草の匂いで充満している。
拓の口調がいつもより真剣に聞こえて、
ベッドに横たわっていた体を起こすと、シーツを胸元まで包んだまま、彼へと視線を向けた。
「俺、物心つくころに両親なくしててさ。
ずっと親戚の家に世話になってたんだ」
その話は、きっと今の拓を築き上げた一番の理由が含まれている内容で、
振り返ることはしない拓の背中を、ただじっと見つめていた。
「いくら小さいって言っても、それなりに自分がこの家の本当の家の子じゃないってのは理解してて……
いつもおじさんやおばさんに気に入られるよう、必死になって完璧な自分を演じてた。
学力だって、スポーツだって……性格だってみんなに笑って……。
だけど俺が10歳になる頃に、おばさんが妊娠して……俺の存在が邪魔になった」
大きな背中なのに
小さく見える背中。
そっと近寄ると、小刻みに震える拓の肩に触れた。