歪んだ愛しさ故に
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「高校になっても、そんな感じ。
学校では爽やかな憧れの人を演じておきながら、外で散々遊んで……。
表と裏の顔を使い分けてた。
ま、成績はだいぶ落ちてたけどな」
そこまで言うと、拓は「ははっ」と笑った。
上半身裸の拓の背中は、いくらエアコンが効いている部屋であっても、ひんやりと冷え切っていて……
「……琴音…?」
「……」
そんな背中に、抱き着かずにはいられなかった。
「拓は……すごいね」
「べつにすごくねぇよ。最低なことしてたんだし」
「それでも、完璧な自分をつくりあげることって、並大抵な努力じゃ出来ない」
容姿こそは、生まれ持ってのものかもしれない。
だけど成績だって、スポーツだって……
ましてや、人気者になるための性格なんて……。
ただ、なりたいと思うだけではなれなもの。
そんな人間になっていたのは、やっぱりそこに、拓の努力があったからで……。