歪んだ愛しさ故に
 
「でももう、そんなのはいらないよ」


抱きしめる腕に力を込めて、冷え切った背中に顔をうずめた。


「あたしが好きになったのは、
 表の顔でも、裏の顔の拓でもない。

 両方をもった拓で……
 それは拓の素の姿だから……」


「……」



二重人格とか、
表とか裏とか、

最初から、そんなふうに言うことが間違っているんだ。


それを作り出したのは彼自身で
彼自身が作り出したものであれば、それは彼で……。




「あたしは……

 あたしの隣にいる拓が好き」





それ以外、なんでもない。
 

< 268 / 287 >

この作品をシェア

pagetop