歪んだ愛しさ故に
「でももう、そんなのはいらないよ」
抱きしめる腕に力を込めて、冷え切った背中に顔をうずめた。
「あたしが好きになったのは、
表の顔でも、裏の顔の拓でもない。
両方をもった拓で……
それは拓の素の姿だから……」
「……」
二重人格とか、
表とか裏とか、
最初から、そんなふうに言うことが間違っているんだ。
それを作り出したのは彼自身で
彼自身が作り出したものであれば、それは彼で……。
「あたしは……
あたしの隣にいる拓が好き」
それ以外、なんでもない。