歪んだ愛しさ故に
「いらっしゃいませー」
という、店員さんの声は気にせず
ガラスケースに収められている指輪を眺めている拓。
えっと……
これはいったい、どういう意味が……。
「お前、どういうのがいいの?」
「え?」
急に振られた質問。
まさかとは思っていたけど、やっぱりこれは、あたしの指輪を見に来ているらしい。
さすがにエンゲージリングとか、本格的なものを見に来ているわけではない。
あくまでも、ファッションリング……
もしくは……ペアリング。
「でもなんで……?」
「男避け」
「え……」
さらりとそんなことを言ってのける拓に、思わずぽかんと口を開いた。
言葉を失っているあたしに、拓はちらっとあたしの顔を見ると、
「悪い?
独占欲。
お前が俺のモノだっていう印をつけときたいだけ」
「……」
そんなふうに言われたら、誰が「悪い」なんて言えるだろう。
照れくさくて、ふいと目を逸らすと
あたしも目の前のジュエリーを眺めた。