歪んだ愛しさ故に
「……それなら、ペアがいい。
あたしだって、拓を独占したいから」
店員さんが、ちょうど他のお客さんに対応しているからこそ、言えた言葉。
拓はあたしの言葉を聞くと、ニヤッと微笑んだ。
「じゃあ、シンプルなやつ選べよ」
「……うん」
あたしと拓の間に、それ以上の言葉はいらなかった。
お互いにきっと、
無駄にキラキラしたものや、いかついものは好きじゃない。
そんな中、一つの指輪に目が留まった。
いたってシンプルの
少しだけカーブのかかった指輪。
メンズ物はただのシルバーで
レディースだけ、ピンクゴールドのラインが入っている。
「……これがいい」
「どれ?………ん。いいんじゃない?」
あたしが選んだものに、拓は文句を言わなくて
店員さんに行って、ショーケースから出してもらう。
ためしに嵌めてみたその指輪は、
無駄な物がない分、綺麗に指に収まり、すぐに気に入った。