歪んだ愛しさ故に
頭を深く下げられた二人は、目を見開き驚いていて、
今心のうちにある想いを、彼女に打ちあけた。
「あの時は本当に悪かった。
いまさらって思うかもしれないけど……
どうしてもお前に一言謝りたかったんだ」
頭はまだあげられなくて、
しばらくしてから彼女が一歩踏み出すのが分かった。
「………拓先輩…」
久々に聞いた
彼女の声……。
決して高くはない、芯の通るハスキーボイス。
「あたしはもう……。
あの日から、こうやって瑛太と幸せな日々を送れてます。
もう拓先輩を恨むようなことはしてない。
だからもう、悔いるような顔なんてしなくていいですよ」
その言葉を聞いて、ゆっくりと顔を上げた。
そこには、もう怯えた瞳が消えた彼女の顔があった。