歪んだ愛しさ故に
 
「ようやく見つけたんですね。
 拓先輩も。

 大事にしたい人が」


その言葉には素直にうなずけなくて
だけど何も答えない俺の反応を見て、彼女も悟った。


そして……



「幸せにしてあげてください。

 今度こそ」



もう見ることはないと思っていた
穏やかな微笑みを俺に向けた。






隣の男の手を引いて
俺の前から立ち去る二人。


引き留めることも
その必要ももうなくて


ただじっと立ち尽くしていた。


心のモヤモヤが解消されていく実感を身に沁みながら……。





「拓……」





そして後ろから
今一番逢いたい女の声を聞いて、我に返った。

 
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