歪んだ愛しさ故に
「というのが流れです。
そこにインパクトあるPOPを考えていただきたいのですが」
一通り木村さんからの流れの説明を聞いて、みんな資料に目を通していた。
持っているお題は、オープンしたばかりのデパート。
そこの広告を大々的にあちこちに載せるが、他と差別化が出来るほどの文言を集めているらしい。
「今日は遅くなってしまったので、説明だけですが、
また改めて後日、打ち合わせをスケジューラーに入れておくので、それまでにそれぞれ考えてきてください」
「分かりました」
打ち合わせが、定時を過ぎてからの開始ということもあって
さすがにこれから話し合うってことはないらしい。
後日打ち合わせと言っても、明日とかすぐに入るんだろうな……。
デスクに戻ってからか、帰ってからか、とりあえず資料漁らないと……。
そう思っているうちに、木村さんと、もう一人の田代さんが会議室から出て行こうとする。
マズイ!
あたしもこの流れで外に出ないと、上沢さんと二人きりになってしまう。
ハッと思いだし、慌てるように席を立った。
だけど……
「豊田さん、ちょっといい?」
「……」
まるでそれをお見通しだったかのように、上沢さんの手があたしの腕を掴んだ。