歪んだ愛しさ故に
「会議室に忘れてきたのかも……。
今日はもう帰るので、あとで寄っていきます」
素顔を見られないよう、なるべく顔を伏せ、
一言言って、日報だけ書こうとパソコンを開いた。
過去の自分。
最低だった自分。
きっとそれは
今の上沢さんに何か言う資格すらないほどの自分で……
「お先失礼します」
それを振り切るように
冷たく、ノリの悪い自分を作り出した。
「こーとーねーちゃん」
オフィスを出て
目の前に差し出された眼鏡。
それは奪われたはずの、可愛げのない銀縁眼鏡で……。
「一緒に帰ろっか」
悪戯に微笑む彼。
その彼が
過去のあたしを引っ張り出していく……。