だから私は雨の日が好き。【花の章】
女だらけの部署だからこそ、自分のままでいる難しさを見抜かれてしまっていた。
作り上げた私を知っている彼女たちには、私が『無理をしている』ことなんてお見通しだったのだ。
こんなに人を見る目を付けさせたのは自分の成果だとも思うけど。
優秀過ぎる後輩たちに、少しだけ困ってしまうのも確かだった。
「うちの部署は有能ね」
「亜季さんのおかげですから」
千景は笑った。
自信満々な顔で。
その顔が自分のしてきた仕事を評価できる一番のもので。
嬉しくなって、私も笑った。
「ほら、席に戻りなさい。もう少ししたら、役員スケジュールの再確認するわよ」
はい、と返事をして席に戻る千景を見送る。
千景に言われた言葉は、私の気持ちをとても軽くしてくれた。
圭都と離れてから。
無意識に企画営業部に関わっていなかった自分を自覚した。
圭都の名前を口にすることも出来ず。
仕事上どうしても部署へ行かなくてはいけない時は、後輩たちが進んで連絡係になってくれていた。
あの時は、なんとも思わなかったその行動。
忙しくて動けない私の代わりに、率先して動いてくれたんだな、と。
それくらいにしか思っていなかったのに。
振り返れば、彼女たちは私を守ってくれていたのだと、容易に分かる。
仕事中は私に気遣う素振りなど見せずに、自然な流れで私を救ってくれていた、と。
この後のミーティングのための資料を作りながら、柔らかい微笑みが漏れる。
心の底から『ありがとう』と想った。
この子達がいてくれて、私は幸せだ。