だから私は雨の日が好き。【花の章】





彼は、優しいから。

近くにいれば簡単にその優しさに気付くほど、彼は優しい。

同期で彼のことを良く知っていてれば、彼に惹かれるのも無理はないと想った。


そんな話を横耳に準備をしていたお茶を持って、社長室へ向かおうとする。

すると千景が私に声を掛けてきた。




「亜季さん、私行きますよ。データの出力、途中でしたよね?」


「あら、ありがとう。じゃあ、お願いしようかしら」


「はい。お任せください」




千景にお茶出しを頼んで、自分のデスクに向かう。

他の子達は、仕事をしながらも楽しそうに話をしていた。


ミーティング用のデータを出力し各自に渡して確認をする。

千景がお茶出しから戻ってきたのを合図に、簡単なミーティングを始めた。

今日のようなブッキングがないかどうかの確認をする。

方法は至って原始的で、部署ごとのスケジューラーと秘書の持っている手帳を読み上げていくだけだ。


これが意外と時間を取られ、向こう一週間ともなれば一人の役員だけで二十分以上かかることもある。

ただ役員の予定となればブッキングは致命的で、今日のようなことが起こると取引問題にだって発展しかねないのだ。



いつもはかなり時間のかかる作業も、今週は予定の少ない役員が多かったのであっさり終わった。

と言っても一時間弱はかかっていたけれど。


ミーティングが終わってすぐ、秘書室のドアがノックされた。




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