だから私は雨の日が好き。【花の章】





「今日の同期会に参加してきなさい」


「そんなことまでご指示なさるんですか?」


「自分の気持ちを確かめることは、大切なことだ」


「確かめるも何も、私は――――――」

「若いというのはね。自分を知らない、ということなんだよ。お前はまだ若い。それを知りなさい」




ぽんと私の肩を叩いて自分のデスクに戻る。

すぐに内線電話に手をかけて、第一の部長を呼んでいた。

これから此処でミーティングをするらしく、どうせその後飲みに行くのだろう。

テーブルの上にある湯呑を持って、静かに社長室を後にした。



秘書室に戻ると定時を少し過ぎていた。

待たせてしまって申し訳ないと思い急いで戻ると、みんなが準備万端で座っていた。




「ごめんなさい。社長との話が長引いてしまって」


「いいえ、お疲れ様でした」




千景が立ち上がって私の席までやって来る。

それに続いて、後輩たちが全員デスクの前に並ぶ。

秘書課が並ぶというのは圧巻なものだな、と。

どうでもいいことに感心してしまった。




「本年も大変お世話になりました。ゆっくりお休みになって、良いお年をお迎えください」


「ありがとう。今年は、要らぬ心配をかけた年になってしまったわね。ごめんなさい。みんなもよいお年を。来年も一緒に頑張りましょう」


「はい。それでは、お疲れ様でした」




千景の声に続いて全員から『お疲れ様でした』という声が飛んでくる。

各々同期忘年会に向かうようで、一人一人と言葉を交わして送り出した。






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