だから私は雨の日が好き。【花の章】
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「なんで此処なのよ・・・」
メールを見た時には最後の律儀な一言に気を取られていたけれど。
お店の名前を見て『やられた』と思ったことは、言うまでもない。
なぜならお店は兄貴の店だったからだ。
圭都は何度か一緒に飲みに来たことがあって、何せ兄貴と気が合う。
そんな巡りあわせから、ご飯も程よく美味しいこの店をチョイスしたのだろう。
入口を入ると店内はそれなりに賑わっていて。
時間が早いため混雑しているが、うるさい感じはなかった。
「いらっしゃいませーっ!て、亜季かよ」
「大きい声出さないでよ。恥ずかしいじゃない」
「もう始まってるぞ。混ざって来い」
奥のテーブルを何席か繋げて十数名の飲み会が始まっている。
兄貴の声に気が付いた圭都が、目ざとく私を見つけてこちらにやってきた。
それを見て、同期メンツは驚いたような顔をしていた。
それもそうだ。
全員、私が『フラれた』事実を知っているのだから。
プライドの高い私が、フラれた圭都と『友人関係』に戻るなど。
誰にも想像できないのは無理もない。
当の本人である私だって、そんなことが出来るとは思わなかったのだから。
それなのに、今。
此処に来ている自分自身に、少なからず驚いていた。
そして、そんな面倒な私でも『会えて嬉しい』と呼んでくれる同期を見て。
この面子と同期で本当に良かった、と想った。