だから私は雨の日が好き。【花の章】
週末は、あっという間にやってくるもので。
以前はもっと淡々と過ぎていたはずの毎日が、とても早く過ぎている気がしていた。
それは『週末を楽しみにしている』ということの証明のような気がした。
「おはよう。乗って」
休日の輝はとてもカジュアルな格好をしているが、どこかキッチリとしている。
自分に似合う服をきちんと選んでいる姿はとても好感が持てた。
私服で並ぶとどうしても年齢差を感じてしまい、心なしか若い服装をしてしまう。
明るい色と短めの丈を選択してしまう自分が。
なんだかとても滑稽に想えた。
「どのくらいかかるの?その向日葵畑まで」
「二時間ちょっと、ってとこかな。ゆっくり行こう。天気もいいし」
抜けるような青空に、少しキツイと感じる陽射。
それは八月らしい良い天気で、とても気持ちがいい。
車の中では他愛無い会話ばかりで。
どちらかというと無言でいることの方が多い。
時折、輝が仕事の話をしてくれる。
最近の櫻井君と山本さんの様子とか、今手掛けている仕事とか、後輩の成長とか。
私が自分のことを話さないということを良く知っているので、自分から会話をしてくれることが増えた。
それに答えてあげたいと、たまに自分から色々な報告をすると興味深そうに話を聞いてくれる。
輝は、自然と相談したくなるような人だった。
人の話を聞くのが上手で、相手が言いたいことを言い終わるまで辛抱強く聞いてくれる。
聞くだけでなく理解してくれることが、とても嬉しかった。