だから私は雨の日が好き。【花の章】
「うわぁ・・・」
「凄い景色だろ?いつか絶対使おうと思ってたんだ」
「すごい・・・」
「綺麗なんだけど、ちょっと切ないよな」
「そんなことないわ。凄く、綺麗」
東向きに揃って顔を向けている向日葵。
一斉に風に揺れる花と、緑の葉が翻る。
香りの強くない向日葵は葉の緑の香りが強くする。
土と緑が混ざった香りは、どことなく懐かしい気配がしていた。
「年明けのこと、憶えてるか?」
「・・・えぇ。憶えてるわ」
「この景色を見た時、亜季が沢山いるみたいだと想った。ロケハンで来た時は朝早かったから、東から昇る太陽を真っ直ぐ見つめているように見えたんだ」
「じゃあ、太陽が櫻井君ってこと?」
「俺にはそう想えた。実際、俺にとってはそれくらい存在感のある上司だし」
懐かしむように話をする輝は、以前のように切なそうな顔をすることがなくなった。
以前よりも少し逞しくなった輝。
それは自信の現れのような気がした。
企画営業部の中でも輝はかなり仕事が出来るのだと、噂で聞いた。
それは社長も太鼓判のようで。
時折探る様に聞かされる輝の仕事の話に、実はとても耳を傾けている。
第一営業部と仕事をすることも多く。
程よい距離感になり、今では秘書課との飲み会が恒例になっている篠崎からも話を聞く機会が増えていた。
「あんな風になりたい、と。俺はいつも想ってた」
真っ直ぐ向日葵を見つめている輝。
その横顔には決意があって、私は小さく笑った。
綺麗とは言い難く、それでもどこか整った顔。
知的で、端正。
いつも『きちんとしている』貴方。