だから私は雨の日が好き。【花の章】
「貴方は名前の通りに成長しているわよ」
「え?」
「貴方の名前は『輝く』という字でしょう?眩しい光が辺りを照らすという意味よ」
「・・・亜季」
「なんだか大人になったわね、輝。私に逢った頃とは比べものにならないほど、大人になったわ」
輝の隣に並んでいた私は、一歩足を進める。
隣にいた気配を追い越して。
全身を抜けていく風を受け止めて、目の前の向日葵を見つめていた。
背中に感じる視線は、優しくて温かい。
わかっているのよ。
貴方が私の言葉を待っていることくらい。
わかっているけれど、やっぱり私は動けないの。
こんなに大切だと、もう知っているのに。
こんなに好きだと。
気持ちは決まっているのに。
隣に輝が並ぶ気配がして、そっと私の右手を掴んだ。
いや、絡め取ったという表現が相応しい触れ方をして。
私の手に自分の指を滑り込ませてきた。
それは、いわゆる『恋人繋ぎ』で。
驚いて輝を見上げると、悪戯っぽく、それでいて照れ臭そうに笑っていた。
「じゃあ、今度は俺が太陽になる」
「え?」
「亜季の太陽になるから、今度は俺だけ見ててくれ」
「輝・・・」
「俺はずっと探してたんだ。吹っ切るきっかけを。・・・くれたのは、亜季だった」
「そんな・・・。そんな大それたこと、してないわ」
「すぐに忘れられた訳じゃない。でも、救われたのは確かだと想う」
輝の紡ぐ言葉はとても真っ直ぐで。
こちらが恥ずかしくなるようなことだった。
それでも言葉を止めない輝に、些細な抵抗として繋いだ手にぎゅっと力を込めた。