だから私は雨の日が好き。【花の章】
嫌いになった訳ではない。
むしろ、好きになったかどうかさえも分からない。
俺の恋愛はいつも『こう』だ。
始まりなど憶えていない。
終わりは相手を泣かせてしまう。
結局傷付けるだけだと知っていながら、俺はまた居心地の良さを求めてしまうのだろう。
付き合うことが向いていないと知っていながら、それでも『付き合う』というカタチを選択する俺は、どこか滑稽だ。
自分が普通の男とは違う思考回路を持っているのではと考えることがあるが、それは違う。
性別なんてものは関係なく。
俺は、『人間』として感情に何か欠陥があるのでは、と想う。
家族や仕事や友人には正常に働くのに。
いざ『恋愛』になると正常に機能しなくなるこの感情を、俺は持て余していた。
大切であることを、どうして俺は上手く伝えられないのだろう。
俺の『伝え方』が問題なのか。
相手の『受け取り方』が問題なのか。
答えはいつも、出ないままだ。
大切だという気持ちは、他の人と何も変わらないはずなのに。
一体、何が――――。
どうか俺意外の男がコイツを幸せにしてくれ、と。
他力本願でも願わずにはいられなかった。
俺は結局傷付けてしまったから。
それを癒してくれる誰かを見つけてくれたらいい、と。
そんな傲慢なことを口にする程馬鹿ではなかったので、心の中で小さく願った。
落ち着きを取り戻した彼女は笑顔で玄関まで送ってくれて。
『我が儘言ってごめんね』と言ってくれた。
『俺こそごめん』と言うのは簡単だったが、謝ることは逃げることと似ているので嫌いだった。
小さく笑って玄関のドアノブに手を掛けた。
振り向いて見つめた彼女は、困ったように笑っていたので同じように笑って見せた。
「元気でな」
それだけ言って、扉を閉める。
ガチャンと閉まった其処から、俺とアイツの時間は別れた。
一切交わることのないこの先を想いながら。
少なからず安堵の溜息を吐いて自宅へと向かった。