だから私は雨の日が好き。【花の章】
同居
――――――――――――――……
―――――――――――――……
「ただいま」
「かずぅ、おかえりぃ」
「おぉ、ひめがお出迎えしてくれるのか。ただいま」
「ぱぱとまま、まってるの。かずもきて?」
「そうか。じゃあ一緒に行こうな」
玄関で迎えてくれた姪と一緒にリビングに向かう。
今年四歳になる姪は、一緒に住んでいることもあって俺にベッタリだ。
日本に帰ってきた義兄さんに物凄く妬まれたことが昨日のことのようだと、そんなことを思った。
義兄さんの転勤は三年間だった。
当初イギリス支社へ転勤になりそのまま三年定住する予定だったので、出産した後姉の体力が戻り次第、姉も子供を連れてイギリスへ行く予定だった。
イギリス支社に行って現状を確認してみると、想像以上の激務だったらしく珍しく弱音を溢したりしていた。
そんな中支えてくれる家族の存在はとても大切で、日本とは違い家族を大切にする風習が色濃い環境は子育てにも良いものだ、と思っていた。
が、問題はそこではなかった。
せっかくヨーロッパ圏に行ったのだから視察にも足を運ぶべき、という会社の方針に従い営業の間に国を跨いで視察に行くという強硬スケジュールで仕事をこなしている最中。
スイスの支社長にえらく気に入られてしまった義兄さん。
最先端医療と言われているスイスでも仕事を学んでみないか、と言われては。それをしたくなってしまうのが義兄さんの性格なのだ。
結果、会社の援助を受けながら仕事はイギリス、休日はスイスで勉強会や学会、と。元々多忙な上に更に激務をこなすハメになってしまった、ということだ。