だから私は雨の日が好き。【花の章】
同業種だった姉は義兄さんの仕事のことをよく理解しており、性格はそれ以上に理解していたので、反対することはなかった。
ただかなり忙しく、一緒にいられる時間がほとんどない、と判断した姉は。
『じゃあ、帰ってくるまでカズと子育てするわ』
という爆弾を義兄さんに投下した。
一緒にテレビ電話の前にいた俺と画面越しの義兄さんは、ほぼ同時に『はぁっ!?』と声を上げたのだった。
『だって、そっちに行っても智哉と一緒にいれないんじゃ意味ないわ。カズがずっと一緒にいてくれるなら、問題ないでしょう?それとも何か反論が?』
有無を言わせない姉の口調が『反論など言わせない』と言っていた。
姉は良く知っていたのだ。
義兄さんは姉にベタ惚れのため、姉の意見を絶対に尊重してくれるということを。
そして、俺もかなりのシスコン(自覚はあまりないが…)のため、姉の希望であればなるべく応えてやろう、と思ってしまうことを。
結局、姉に逆らうことの出来ない俺達は、姉の意思に従うこととなった。
義兄さんはイギリス単身赴任を余儀なくされ、三ヶ月に一度ある報告会で帰国する、という生活リズムになり。
俺は、義兄さんが帰国するまでという期限付きで姉と同居することになった。