だから私は雨の日が好き。【花の章】
元々かなり仲の良い俺達は、義兄さんが悔しがるくらい仲良く生活をしていた。
出産に立ち合うために一週間帰国をした義兄さんがいるにも関わらず、『旦那さんも抱いてあげてください』と看護婦さんが俺に子供を渡そうとしたくらいだった。
そういえば弟であることを言ってなかったな、と思い出した時には。
義兄さんがとても恨めしそうな目で俺を見つめていた。
生まれたばかりの可愛い娘の傍にいられない義兄さんを可哀想だと思うこともあったが。
それでも仕事に全力で取り組む姿は、男の俺でも惚れてしまいそうな程格好良かった。
激務であり日本と八時間の時差があるにも関わらず、毎日テレビ電話を繋ぐマメな義兄さん。
日に日に成長する愛娘と、何より離れて寂しい想いをしている姉に対する底知れない愛情を目の当たりにして。
俺もこんな風になれるだろうか、と想った。
そんな日々を暮らしながら、気が付けば三年が過ぎていた。
子供の成長は、日々が過ぎていくスピードをとてつもなく加速させていくものだ、と知り。
俺は姉夫婦のマンションを出ていく準備を始めていた。
義兄さんが帰ってくれば、家族三人水入らずで過ごしてくれる。
姉さんのための防犯係と『ひめの』の父親役はお役御免だ。
と、思っていたのに。
事態はそう簡単にはいかなかった。
いや。
本当はここまでが姉の想定内だったのかもしれない。
元々策略家だとは思っていたが、こんなに緻密な計画だとは。
当時は考えもしていなかったのだ。