だから私は雨の日が好き。【花の章】
――――――とある、休日。――――――
『ねぇ、カズ』
『何?』
『本当に出てくの?智哉はいいって言ってるんだし、ここにいればいいのに』
『俺がいたらひめのが混乱するだろ?父親は二人もいらねぇよ。父親代わりがいたんじゃ、義兄さんに懐くものも懐かねぇだろ』
『かじゅ、どぉしたの?』
『ほらぁ、ひめだって寂しいって』
『ひめをダシに使うなよ』
むくれている姉を見て、本当に三十三歳になったのか疑問に思う。
住宅情報誌を片手にコーヒーを飲んでいると、ひめのがテトテトと俺の所にやってきた。
こてんと首を傾げて俺を見上げる時は抱っこの合図。
姪にとことん甘い俺は、コーヒーを机に置き住宅情報誌を放り投げ。
膝の間にひめのを座らせた。
俺が放り投げた雑誌を見て、ひめのが俺を見上げる。
二歳児(もうすぐ三歳になる)とは思えないほどハッキリした顔立ちは、姉の血を色濃く受け継いでいるからだろう。
『かじゅ、どうしておうちみてるの?』
『あぁ。カズはひめのパパが帰ってきたら、違うおうちに行くんだよ』
『え・・・ちがう、おうち?』
『ひめ。カズはパパが帰ってきたら、いなくなっちゃうって』
『いなく・・・?かじゅ、どぉして?』
『んー?カズは元々この家の人じゃないからだよ』
『なんで・・・?かじゅはずっといたもん!どぉして?なんで!?』
『え・・・っ、おい。ひめ・・・?』
『いやぁぁぁっっっ!かじゅがいないなんて、いやぁぁぁっっっ!!!』