だから私は雨の日が好き。【花の章】
号泣する姪を何とか宥めようとするものの、泣き喚くばかりで。
姉に助けを求めて渡そうとするも、ひめのは俺の胸から離れることはなかった。
ここ最近はこんなに泣くことも少なかったので、とりあえず抱き締めて背中を撫でてやる。
小さな背中が激しく上下する度、言いようのない罪悪感に苛まれた。
『あーぁ、カズが泣かせた。私知らないからね』
『おいっ!俺のせいだけじゃねぇよ!姉さんがいなくなるなんて言うからだろ!?』
『本当のことじゃない。ひめに嘘なんか吐かないわよ』
しゃくりあげる姪の顔を覗いてみると、鼻水と涙でぐしゃぐしゃになっていて。
その顔が俺のせいだと思うと、本当にどうしようもない気持ちになった。
可哀相過ぎて、とりあえず鼻水を拭いてやる。
涙も一緒に拭いてやったのだが、後から後から零れてくるのでキリがなかった。
潤んだままの目で俺のことをじっと見つめる可愛い可愛い姪っ子。
見つめている傍からぼろぼろ零れる涙は、今まで見たことがないくらい純粋で綺麗なものだった。
『かず、いかないで』
放たれた言葉に驚いて、思わず姉と目を合わせてしまった。
姪はずっと『ズ』の発音が上手く言えず、俺のことを『かじゅ』と呼んでいた。
それなのに突然。
ハッキリと『カズ』と発音したのだ。
子供を成長させるきっかけなんて何か分からないけれど。
少なくとも俺を繋ぎとめようとしたことが、姪の成長になったのは間違いがなかった。