だから私は雨の日が好き。【花の章】
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そんな経緯のせいで、俺は今も姉夫婦と同居を続けている。
姉夫婦のマンションは4LDKの高級マンションで。
俺一人くらい転がり込んだとして、部屋はまだ余っているのが現状だった。
こんなマンションを買うくらいなら一戸建てにすればよかったのに、といつも思うが。
転勤で何処に行くか分からない夫婦には『いつでも高値で売れる』というポイントの高さはあるのかもしれない。
「おう、おかえり」
「ただいま。珍しいね、義兄さんの方が俺より早く帰ってくるなんて」
「家族サービスだよ。ひめ、おいで」
呼ばれた姪は俺の手をぎゅっと握り、どこか名残惜しそう俺を見上げた。
俺に申し訳ないと思っているようだったので、にっこり笑って手を握り返す。
安心したように笑った姪は、そのまま自分の父親の所まで駆けて行った。
「なんだよー。俺こんなにサービスしてるのに、やっぱりカズがいいのかぁ」
「仕方ないわよ。智哉のいない三年間は、カズにベッタリだったんだから」
「で?なんだよ、二人揃って。なんか大事な話でもあったのか?」
俺がそう言うと、少し空気が張り詰めた。
姪は訳が分からずにきょとんとしながら、よじ登っていた義兄さんの膝からちょこんと降りた。
姉が促して二人の間に座ると大人しくなる。
俺を見つめる姪の瞳は、どこか不安げだった。