だから私は雨の日が好き。【花の章】
彼女
「おはようございます。本日は宜しくお願い致します」
「おはようございます。こちらこそ、宜しくお願いします。朝から元気ですね、南さん」
「えぇ。やっと念願かなって広報になれたんですもの。張り切りもしますわ」
そう言って笑った彼女は、とても晴れやかな顔をしていた。
三年前、初めてイベントに出演した時よりも今の方がずっと初々しく感じる。
彼女は『南 水鳥』(ミナミミドリ)。
この化粧品メーカーの担当になった時、イベントでモデルをこなしていた人だ。
こういう業界にいるとモデルなんて見慣れているけれど。
そんな俺でも驚くほどの美人だ。
初めてのイベントをこなした後、彼女は度々モデルとしてイベントの『顔』ともいえる仕事をしていた。
ステージやマイクでのパフォーマンスだけでなく、彼女の接客に誰もが惹き付けられ『会社の顔』となっていった。
そんな彼女は、三年目にして念願の広報担当となったのだ。
今では俺とタッグでイベントや宣伝事業に取り組んでくれている。
広報配属になってから、たった半年。
それなのに彼女はベテランのように立ち振る舞っている。
――――大人の顔になったな――――
昔は小娘だと思っていたのに、今や立派な社会人になってきたな、と想う。
それでも、まだ隠し続けている本来の自分の顔を。
彼女は上手に隠し続けているのだろう。