だから私は雨の日が好き。【花の章】
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「マジかよ・・・」
「だからお伝えしたじゃないですか。『負ける気がしません』と」
「確かに聞きました。聞いたけど、コレはないだろ・・・」
「普通ですよ。美味しく頂いてますもの」
目の前の人は、本当に化け物だった。
俺達の目の前に空いた銚子は、三本。
確かに目の前には三本しかないのだ。
そして、店員が下げていった銚子の数は十七本。
計二十本の銚子が簡単に空き、さらに彼女は銚子を二本追加した。
俺だってこれくらいの量を呑むことはある。
むしろ、長く飲んでいると勝手に同じだけの量の酒は空いていくだろう。
問題はこの本数を開けた『時間』だった。
俺達は二合の銚子を二十本、計四升の酒を三時間で空けた。
彼女は日本酒を水のように流し込んでいった。
しかし、一気に煽るという下品な飲み方ではなく、しっかりと味わった上で流し込んでいくのだ。
それは見ていてとても気持ちの良いもので。
飲み方も楽しみ方も良く知っている、というのが分かった。
事実、お酒を呑む彼女の姿はとても幼く。
頬を軽く紅潮させ、いつもは引き締まっている表情が柔らかく緩む姿がとても可愛らしかった。
化粧のせいで実年齢よりも大分年上に見えてはいるものの。
綺麗な顔の作りは、どちらかというと『童顔』の部類に入ってもおかしくないと想った。