だから私は雨の日が好き。【花の章】
変化
「おい、カズ」
「・・・ん」
「おい、ちゃんと部屋で寝ろよ」
「ん・・・、あぁ。義兄さんか」
「義兄さんか、じゃないって。ここで寝たら、ひめのに起こされて寝れなくなるぞ」
「あぁ・・・まぁ。そうなんだけどさ・・・」
歯切れの悪い俺を見て、義兄さんは困ったように笑う。
寝ぼけているのと酔っているのとで、俺はまだ焦点を合わせることが出来なかった。
なんで義兄さんがこんな夜中に起きてきたのか、と気になったけれど。
そんなことを考える余裕は、今の俺にはなかった。
「今日、寝つき悪くてさ。一回ソファーで座ってみるか、と思って起きてきたんだ」
「あぁ・・・悪い。俺、今動けねぇわ」
「だろうな。どんだけ飲んだんだよ、そんな風になるなんて」
「四升と四合。二人で」
案の定、義兄さんは絶句した。
俺だってそんなのを聞かされたら絶句する以外の選択肢はないだろう。
やれやれと首を振りながら、キッチンに向かう義兄さんの背中を何とか目に映す。
視界がぐらぐらと揺れている状態でも目を開けている方が少し楽で。
キッチンから冷蔵庫を開ける音が聞こえて目を凝らしてみると、ミネラルウォーターを注いでくれているのが見えた。
姉弟揃って義兄さんには世話をかけてばかりだ、と反省するものの。
この人がいて良かったと、本当に思った。