だから私は雨の日が好き。【花の章】
「マジかよ・・・」
「悪かったって・・・。俺も酔ってたんだよ」
「そりゃそうだ。お前に酒で敵う女がいるなんて、俺としてはそっちの方が驚きだ」
それは俺が一番感じている。
まさかこんなことになるなんて、露ほどにも思っていなかった。
ましてや。
誰かをこの家に上げるなんてことを。
俺がするわけがない、と。
誰よりも俺自身が信じて疑わなかったからだ。
俺の一番大切にしている『家族』のテリトリーに『女』を連れ込むなんて。
考えただけで絶対に有り得ないと言い切ることが出来る程だった。
なのに、俺は彼女を連れてきた。
それも当たり前のように、それをやってのけたのだ。
「で、彼女は明日仕事なのか」
「わかんねぇ・・・。先に聞いとくべきだった」
「仕事だったらマズイよな」
「だよな。だから、もう少ししたら起こしてやろうと思ってる」
「お前は?」
「俺は休み。久しぶりの週末休だよ」
俺は休みだから、どんなに二日酔いになっても構わないが、彼女は違う。
休みなのか出勤なのかも分からないまま酒に付き合わせてしまったことに、とてつもない申し訳なさを感じていた。
義兄さんと話して幾分か酔いが落ち着いてきた俺は、もう少し酔いを醒ますためにシャワーを浴びることにした。
もうすぐ寝るという義兄さんに挨拶をして浴室へと足を向ける。
困ったような優しい顔で笑われて『頑張れよ』と弱々しい応援をくれたことが、少しだけ俺を奮い立たせてくれた。