だから私は雨の日が好き。【花の章】
障壁
「姉さん、話があるんだ」
「あら奇遇ね、私も話があるのよ。聞きなさい」
「いや、俺から話が――――――」
「水鳥ちゃんのことなら、知ってるけど?で、水鳥ちゃんのとこに転がり込もうと思ってることも聞いてるわ。時期は考え中。とりあえず報告しないと、って話なら、もういいかしら?」
姉の言った言葉は俺がこれから言おうとしていたこと全てだった。
これ以上の報告が必要ないと分かる内容で、あまりの筒抜け具合にぽかんとそこにいることしか出来なかった。
今日は水鳥嬢を家に呼んで、姉夫婦に俺達の近況について報告をする予定だった。
なのに、何故か起きたら既に水鳥嬢が家にいて、姉と二人で昼食の準備をしていた。
目覚ましが鳴るはずだった俺の携帯電話はしっかりとアラーム解除されており、そんなことをするのは姉しかいないという考えに至った。
俺の膝の上から降りようとしないひめと、俺の隣で気まずそうにそわそわしている水鳥嬢。
何となく察しがついて、どうせ水鳥嬢の口からあったことを洗いざらい吐かせるために、俺を起こさず水鳥嬢を予定よりも早く呼び寄せたんだろう、と察しがついた。
「あのなぁ。俺からちゃんと説明する予定だったんだから、勝手に聞くなよな」
「だってカズってば、自分の吐いた恥ずかしい暴言の数々を披露してはくれないでしょう?」
「言わねぇよ。そんなもんは水鳥嬢が知ってれば十分だ」
「それじゃあ私は面白くないから水鳥ちゃんに聞いたまでよ」