だから私は雨の日が好き。【花の章】





「わかったよ。ただし条件がある」


「あら。私に条件を出すなんて、生意気になったわね」


「茶化すなって」


「・・・じゃあ仕方ないわね。言ってみなさい」


「水鳥と二人で住ませてくれ」


「当然ね。むしろ二人じゃないとお願いしないわ」


「それと」


「まだあるの?」


「俺達に遠慮して日本に帰ってくるのを先延ばしにはしないでくれよ」




姉だけならばそんなことはないと思うが、義兄さんは遠慮してしまいそうなので先に釘を刺しておく必要があった。

向けられた言葉が自分への言葉で無いことを敏感に感じた姉は、義兄さんと目配せをして嬉しそうに笑った。

義兄さんが大きく頷いて『わかった』と言ってくれたことに何よりもほっとした。


泣きはらした目をした姪が、俺の方をじっと見ている。

そんな顔をされると離れがたいのは俺の方なんだが、と困ったように笑って見せた。

すると、涙をゴシゴシと拭いて零れないように目一杯唇を噛み締めて。

俺の方へとトコトコと歩いてきた。



自分の服を握りしめて上目遣いで俺をじっと見つめる姪。

可愛くて可愛くてたまらない、俺と同じ血の混ざっている女の子。

手を伸ばして抱き上げてやると、甘えるように俺の胸に擦り寄って、クスンと涙を我慢する声が聞こえた。

背中をさすってぎゅっと抱きしめると背中が大きく上下をして。

子供ながらに、一生懸命涙を止めようとしている様がとてつもなく愛しかった。




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