だから私は雨の日が好き。【花の章】
「ひめの、寂しいか?」
「・・・さみしい。かず、いっしょにいかないんでしょ?」
「そうだな。俺は一緒に行けないけど、今度はパパが一緒にいてくれるだろう?」
「・・・うん。かずのことだいすきだけど、パパがいちばんすき」
「じゃあ大丈夫だ。会いに行くよ。水鳥が一緒でもいいかな?」
「・・・・・・ぅん」
「ありがとう。大好きだよ、ひめの」
「ひめもかずがだいすき」
渋々ながらも水鳥嬢のことを認めてくれたようで、可愛い小姑はじっと彼女を見つめていた。
今までほど好戦的ではないものの、完全に認めている訳でもないようで。
その視線に困った水鳥嬢が柔らかく笑うと、待っていたかのように姪が言葉を発した。
「ひめのいちばんはパパだけど、かずのいちばんはひめだから」
一人前の女のような台詞に全員が目を点にして、そして笑った。
水鳥嬢は困ったように優しく笑い『負けないように頑張ります』と宣戦布告に応えていた。
姉と義兄さんは楽しそうに笑っているものの、義兄さんがたまに複雑な表情を浮かべている。
それを見つけては、姉が『いつかはお嫁にも行くんだから、今から慣れておきなさい』と義兄さんに厳しい言葉を向けていた。
幸せな空間の中、姉がじっと俺を見つめているのに気が付いて目を向ける。
その目はなんとも意地の悪い目をしており、俺は背筋が冷たくなるのを感じた。
この目。
確実に何かを企んでいる目だ。