だから私は雨の日が好き。【花の章】
この会社の最高責任者にして全決定権を持っているのは、この会社の会長であり、この人の母親だ。
簡単な親族経営の会社ではない。
最初の後継者候補は、この人を含めて三人いたそうだ。
その中で無記名の今後の会社展望とそのリスクマネジメント、見込利益、成長試算グラフなど、様々な課題をやり遂げ評価される。
課題提出までに与えられた期間は半年。
マネジメント業界に激震を与える程の内容だったその経営者選抜試験は、一部の業界関係者では有名な話だ。
人脈を生業とする俺達の業界も、その例外ではなかった。
だから知っている。
この人がどれだけ仕事の出来る人なのか、ということも。
その課題を考えだし評価を下したこの人の母親が、どれだけのマネジメントスキルと人を見抜く力を持っているのかということを。
「実は、会長から言伝がありまして」
「えっ!?あ、はい・・・何でしょうか」
「『私に逢いたいのなら、せめて息子くらいは納得させて欲しいものだわ』だそうです」
・・・ということは!
「私は納得をし、貴方の企画を良いものだと判断しました。十分、会長へのアポイントを取れるレベルと判断した、ということです」
「ありがとうございますっ!・・・それでは、アポイントをお願いできますか?」
「ええ、もちろん。実は、今日お見えになることも伝えてあるので社内におります。今確認してまいりますので、お待ちいただけますか?」
「ありがとうございますっ!お時間は取らせませんので、ご都合さえよければ、いくらでもお待ちいたします!」