だから私は雨の日が好き。【花の章】
「御堂会長、お願いがございます」
「なんなりと、と簡単にお返事が出来るような内容ではなさそうね」
「いいえ。身の丈は弁えていますから、そんなに難しいお願いをするつもりはありませんよ」
どうだか、と呆れたような笑いを浮かべて『どうぞ』と先を促される。
俺の願いはただ一つ。
水鳥嬢の奪還だ。
その為の一番の近道は、目の前の人の繋ぐ関わりだ、と俺は確信している。
「提案しました次年度のウェディングフェアのプラン内容を、一点、変更させて下さい」
「え?えぇ、それは尾上さんにお任せすることにしていますから、お好きにどうぞ。ただし、妥協は許しませんからね」
「はい、それはもちろん。内容の変更点は素材の調達についてです」
「素材・・・?それって――――」
「全て柴田財閥のグループ会社からの供給で実施をしたいのです」
ニヤリと笑った俺の顔を見て、驚いたように目を見開いたのち、楽しそうに声を上げて笑う。
その声は今まで聞いたどの声よりも楽しそうで、今までのどの時よりも素の表情をした会長だった。
その仕草が血の繋がっていないはずの水鳥嬢と良く似ているのを感じて、きっとこの人のことをとても尊敬しているのだろうな、と。
そんなことを想った。
「貴方、イイ頭の回転してるわね」
「これで此処までやってきましたから」
「頼もしい限りだわ」