だから私は雨の日が好き。【花の章】
「今度、招待するよ。その時は二人で来られるといいね」
「さぁ・・・ね。二人で行ける日なんて、いつ来るのやら」
「それはカズ次第なんじゃないの?まぁ、頑張りなさいよ。もう近くで説教してあげることは出来ないんだから」
「わかったよ。・・・俺も連絡するから、気を付けて」
優しく笑った姉は俺をふわりと抱き締めた。
相変わらず細い姉の身体は骨が当たってゴツゴツしていたが、その腕の中はとても温かかった。
子供を産んでからヒールを履かなくなった姉は、少し背伸びして俺の首へと腕を回した。
細いその身体をぎゅっと抱きしめると、同じように縋り付いて姉が俺を抱き締めた。
力を緩めて姉を見つめると目じりに少しだけ涙が滲んでいて。
もらい泣きしそうになった俺は、目じりに頬擦りをしてそれを誤魔化した。
頭に顔を埋めて優しくキスをして腕をほどく。
目の前には、呆れたような、それでいてとても嬉しそうな顔をした義兄さんがいた。
「・・・カズ。今日は特別だからな」
「悪いね。やっぱり俺、極度のシスコンらしいや」
「まぁ、いいんじゃない。小学生の頃から二人だけだったんだから」
ん、と頷いて義兄さんの方へと足を向ける。
うとうとしている姪を受け渡されて、夢の淵にいるその子へ優しくキスをした。
むにゃむにゃと俺の名前を呼ぶいとしい熱にたまらなくなり、もう一度ギュッと抱き締めて姉へと受け渡した。