だから私は雨の日が好き。【花の章】
「ちょっと!重いっ!」
その声に、もう元通りだ、と思った。
抗議なのかわからないようなその声に、二人で笑っていた。
遠慮なんてするな。
何でも聞いてやるから。
だからこそ、お前には言わなくちゃいけないことがある。
「まだ、俺に言ってないことがあるだろう。遠慮するな。今更、何聞いたって驚いたりしない」
櫻井さんから聞いた事実は、俺に衝撃を与えた。
時雨が抱えている痛みも知っている。
全てを話してくれた訳ではないことも分かっているけれど。
時雨の気持ちを、時雨の口から聞ききたかった。
その上で、お前をちゃんと理解したいと思った。
そうすることで、本当に元通りになれる気がしていた。
「自分で決めたことに胸を張ってろ。迷ったらまた、話くらい聞いてやるさ」
いつでも背中を押してやる。
時雨の幸せに必要なことなら。
どんなことでも助けてやるよ。
今はまだ。
それが、俺の出来ることだと想うから。
「・・・沢山、聞いて欲しいことがあるよ」
「そうか」
「まだ、上手く整理出来てないことばっかりでさ。本当は、森川にはもっとちゃんと報告したかった」
「俺は別に、なんだっていいぞ。時雨が話したいと思った時に、呼べよ」
「うん。・・・さすが森川だね。やっぱり、話を聞いてもらうのは、森川しかいないよ」