だから私は雨の日が好き。【花の章】
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「おまたせしました」
第一と同行した会議から戻ってくると、櫻井さんはオフィスのパソコンに向かっていた。
おう、と顔を上げてすぐに画面に目を落とす。
社内にはまだ人が沢山いて、いつも通り席に着く。
目の前の席には櫻井さん。
その隣に座る時雨。
いつも通りの光景のはずなのに、何かが違う。
何が、変わったのか。
仕事をしている仕草も、言葉のやりとりも、何もかもいつも通り。
そのはずなのに。
違和感の正体は分からなかったが、今すべきなのはそんなことではない。
打ち合わせの資料を片づけながら櫻井さんに目線を向けた。
「櫻井さん、何か用意するものありますか?」
「そうだな、提出した企画書と運営内容をまとめといてくれ」
「わかりました」
事務的なやり取りをして、すぐに資料を用意する。
とりあえず仕事を終えてから余計なことに頭を悩ませよう、と思った。