だから私は雨の日が好き。【花の章】





――――――コンコン――――――




ドアがノックされる。

今は、それに応える気力がない。

仕事をしなくてはいけないのに。




「森川」




その声は、低くよく響く。

こんなタイミングで会社に戻ってこなくてもいいのに。

それに、どうして俺がここにいることが?


本当に、意地の悪い人だ。




「今泣いてることは、きっとお前を成長させる。これから先のお前にとって、必要なことなんだよ」




泣いてなんか、いないですよ。

いや。

俺の心が泣いてるのか。



この痛みが、俺を成長させる。

これから先の俺にとって必要なことならば。

俺は、これを受け入れられる気がする。




たった一言で。

こんなにも救われる。




やっぱり敵わないですよ。



櫻井さん。





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