だから私は雨の日が好き。【花の章】
「今日は特に何もないけど。どうかした?」
「みんなで帰りに飲んで行こうか、って話をしてて。よかったら、亜季さんもどうですか?」
「それなら、みんなで行ってらっしゃい。今日は遠慮しておくから」
「えぇーーーっ!!いいじゃないですか!!明日は、代表達みんなで海外出張ですし。連絡なんてそうそう来ないでしょうから!!」
「たまにはチーフ抜きで行くことも大事よ?」
「一緒がいいんです!!」
「千景(ちかげ)はそうでも、みんなはそうじゃない――――」
「「「私達も、亜季さんと一緒がイイです!!」」」
部署全員から声を合わせて誘われては、断りきれない。
それを見越して全員残ってたんだな、と今更ながらに気が付いた。
「千景・・・、図ったわね」
「だって!!こうでもしないと、亜季さん一緒に行ってくれないじゃないですか!!」
「今月もう三回目よ?本当にいいの?」
「はいっ!!もちろん!!」
気を遣われると、余計に惨めになることを知っているはずなのに。
それでも彼女たちが励まそうとしてくれているのがわかって、無碍に断るのは憚られた。
仕方なく了承したものの、この誘いに救われているのも事実で。
そう想うと『有り難い』以外の何物でもなかった。