だから私は雨の日が好き。【花の章】
「・・・それと部下に慕われることと、何の関係がおありなんですか?」
「同じことだ。相手が与えて欲しいと思うものを与えただけだ」
この男。
天然で腹黒いんじゃないか。
今まで会った男の中でも、最低を『地』でいく人間なのだ。
相手の望む自分。
相手の望む上司。
それを分かっているからこそ、それを与えれば部下から慕われる。
そして、上司が必要とする自分を演じれば。
自ずと『会社に必要な人間』と評価される。
計算高さは確かにない。
けれど、自分を見せないということに徹底したこの男を、信用する気にはならない。
「・・・そう、思ってたんだけどね」
「え・・・?」
「男同士というのは、そう簡単でも無いということを。俺はあいつらから教わったんだ」
そこには、今まで見せなかった篠崎の優しい顔があった。
それを見た第一の部下たちが、嬉しそうにはしゃいでいた。
秘書課は、といえば。
噂とは随分と印象の違う篠崎に驚き、そして戸惑っていた。
千景は、隙あらば私と篠崎の間に入ろうと必死だったのを、何度も目の前の男の子に妨害されていた。
そんな千景でさえ、驚きを隠せ無いようだった。
小さな声で話しているので、会話の内容までは聞こえていないだろうけれど。
それでも私が放つオーラに敏感な秘書課の後輩たちは、私の心境を事細かに理解していただろう。