だから私は雨の日が好き。【花の章】
なんとも言えない空気のテーブルを離れると、彼らはまた楽しそうに話を始めた。
森川君はみんなに囲まれている。
それなのに彼は、どこかみんなと距離を取ってその輪の中にいるような気がした。
――――『お前つい最近フラれたばっかりじゃなかったのかよ』――――
彼も、私と同じような状況にいるらしい。
あんなに無表情でも心の中は傷ついているんだろうな、と考えた。
表情に出ない分、それがどれほどの痛みなのか周囲には伝わりづらいのだろう。
私に良く似ていると想った。
そんなことを考えても仕方がないので、まずはここの手伝いに専念をすることにした。
いいのか悪いのか、お店は大混雑で猫の手もかりたいほど賑わっていた。
オーダーを取り常連のお客さんと会話をし、ドリンクを運んでいるうちにあっという間に時間は過ぎていった。
遅い時間になるとテキーラやウォッカにウイスキー。
きついお酒をショットで頼んで一気に飲む、なんていうお客さんも多く、気付けばドンチャン騒ぎになっていく。
そうなると必然的に酔いつぶれるお客さんも増えてきて、そのまま帰路につく人も多かった。
店内の人が少し減ってお店が落ち着くと、私の仕事も終了。
兄貴に声をかけられて『カウンターに座ってゆっくり飲め』と促された。