だから私は雨の日が好き。【花の章】





「悪かったな、急に手伝わせて」


「別に。週末に来ればいつものことじゃない」


「まぁな。でも最近は週末に来ることも少なかったから、疲れたろ?」


「昼間の仕事よりはずっとマシよ」


「そうだよなー。お前、社長秘書だもんなー」




作り直してくれたレッドアイに口をつけながら笑って見せる。

律儀な兄は、案外私のことを気遣ってくれていた。



時刻は午前三時。

もうすぐ閉店の時間なので、お客さんもまばらになっていた。

いつも遅くまでいる常連さんと知り合いのお店のスタッフさん。

それと、散々ショットグラスを煽っていた森川君たちが残っているくらいだった。




「それにしても。お前の会社の子、すげぇな」


「確かにね。あれだけ飲んで、まだあんなに涼しい顔してるだなんて」




森川君は、予想に反してお酒が強かった。

赤い顔をしているのは変わらないのに、周りの子たちのように騒いだり眠そうにしているわけでもなく。

入ってきた時とさほど変わらぬ様子でいた。


店員の子が閉店を知らせに行くとてきぱきと準備をし、全員のチェックもスムーズに済ませていた。

面倒を見ているその姿は、やはり保護者のようで。

イベントスタッフにも慕われているんだろうな、とぼんやり思った。




スマートで根っからの営業気質で。

それでいて滲み出る優しさを感じる対応。

それは、ある『誰か』を彷彿とさせるものだった。




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