潤うピンクの魅惑キス
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一週間後。
時任の心はここにあらずで、朝からずっとパソコンを眺めたまま、いっこうに仕事が捗らずにいた。
会議初日に大遅刻をかまし、プロジェクトのチーム長から叱咤をくらっても、時任は今でもあの唇を忘れらなかった。
ぷるぷるの唇が脳裏を掠めるどころか占領してしまって、まったく仕事にならない。
あんなに魅力的な唇は、25年間生きてきたけれど、今までに一度も見たことがない。
名前を聞けばよかった。あわよくば、連絡先を。
あの時突然キスをしてしまったことを詫びたい気持ちが身体中を支配する。
侘びなければ、もう一度会わなければきっと仕事に手が付かない。
一応、プロジェクトに責任者として名前は残してもらえたけれど、きっとヘマをしたら除名間違いなしだ。
こんなにボーッとしている暇はないと自分でもわかっているのに。
時任は弁当袋を引っ掴むと、早々にオフィスを出て、近くの公園のベンチに腰をおろした。