潤うピンクの魅惑キス


それでも頭をあげない時任に、原田は困惑の溜め息を漏らす。
仕方なく、原田は本当のことを告げた。


「私、キスをされるのが嫌いなんです」


その言葉に、バッと時任が顔をあげる。


「なんで」
「……キスをしたあと、どんな顔をすればいいのかわからないから」


原田の頬が、唇と同じピンク色に染まっていく。
それはどんなイルミネーションよりも綺麗で、思わず見惚れたほどだ。
ぷるんとした艶やかな唇を噛み締めて、原田は自信が無さそうに俯く。


「こんな唇をしているから、男性はキスをしたがるんだけど、それが嫌なんです」


今にも泣きそうな目をしている。
きっと自分にとってコンプレックスなのだろう。
原田は続ける。


「でも、不思議なことが起きたんです」
「不思議なこと?」
「私、時任さんにキスをされても、ぜんぜん嫌じゃなかった……突然のことで殴ってしまったのはごめんなさい」
「……原田さん」


時任は、驚きと恥ずかしさからぽかんと口を開ける。
彼女の中でそんな葛藤があったなんて、思いもよらなかった。
てっきり、気持ちの悪い変質者というポジションかと思っていたのに。
時任はそうではないと安心し、原田の頭を撫でた。


「笑っていればいいんだよ」
「え?」
「キスをしたら、笑ってよ」


それはどんな笑顔でもいいからさ。

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