幽霊ナイト
怖くないわけじゃない。
だけど、幽霊はどこに行っても大体いるから逃げても変わらないし
何より、襲ってきたり危害は与えてこないから…。
もう、風景の一部になってしまっている。
そんな風に、安心しきっていたわたしの耳に奇妙な声が聞こえてきた。
「…?」
音の発信源を探すと、直ぐに幽霊の女の人だと分かる。
目は血走り、口を開け「あ゛あああぁ」と“言葉”になっていない“言葉”を発している。
ぞわっと背筋が凍りついた。
―…こっちに向かってきてる。
ズルッズルッと不愉快な音を立てて。ゆっくりゆっくりと。