ラブレターを貴方に
――――言い出せないまま、数日が過ぎた。
彼を知らず知らずに、見つめる事が増えて。高橋翔太をもっと知りたいと、思いはじめていた。
仕事中目が合うと、彼は控え目に手をあげて私に見せる。
私はいつも、小さく手を振ってそれに答えた。
仕事中は本当に無愛想で、無口だけど、私にだけは、笑顔を見せてくれる。
そんな特別感が、私のテンションをあげた。
それに、小さな事にも気遣ってくれる、繊細さもあって。
彼といると、不思議と気持ちが落ち着いた。
連絡先を交換し、デートもした私達。
ここまでいってしまえば、もう今更で……。
私の胸には罪悪感と、彼を受け入れつつある新たな気持ちに、苛まれていた。
そんなある日――――。
「どうしよう……」
退勤後の更衣室。
ロッカーの前で、携帯を持った手がフルフルと震える。
メールの主は、高橋さんで。
『日曜日に映画に行こうよ』と、いうお誘いだった。