ラブレターを貴方に

日曜日は、彼と約束をしていた。

なにやら、私に見せたいものがあるとかで。
余りにも真剣な表情だったから、私も頷く顔に自然と力が入った。

でも、相手はあの高橋さん。
ずっと、ずっと片想いをしていた王子様な訳で……。
私の心はゆらゆらと揺らいでしまう。


「二宮さん、大丈夫?」

「え?」

帰り道。ふと、隣を歩く高橋君に、気付かされた私は慌てて首を振った。

「う、うん!何でもないよ?」

「嘘。ここ」

そう言って、彼の指先が私の眉間にそっと触れると、ビクっと身体が反応してしまう。
まるで、見透かされてるようで、緊張がはしる。


「難しい顔してたから」

眼鏡越しに見せる優しい眼差し。
その瞳に耐えられなくなって、思わず視線を逸らした。

私は、そんな瞳で見られるような、人間じゃない。

罪悪感に押し潰されそうで、もう耐えられなかった。


「実は……日曜日、誘われてるの。高橋さんに……」


「…………」


彼は今、どんな顔をしているんだろう。
見上げる事が出来ない私を、沈黙が大きく包んだ。


怒ってる?彼氏がいるのに、迷ってるなんて。

無言で歩く高橋君。


そして――――


「……そっか。それで、二宮さんはどうしたいの?」



え?



思ってもいない言葉に驚き、思わず彼を見つめる。


「知ってたよ、全部。本当は、俺宛じゃないって事」


そう言った、彼の瞳があまりにも悲しくて。
微かに笑って見せる姿が、更に私を切なくさせた。




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