ラブレターを貴方に
「愛、私!いよいよ出陣するよ!」
退勤後の女子更衣室。鼻息を荒げ、念入りにメイクをなおすと、隣で髪をセットし直す愛が、鏡越しに私を見た。
「何なに?一体何処の武将を落としに向かうのかしら?」
「勿論、紳士服城の高橋殿をですぞ」
ふざけて言ってはいるけれど、内心はバクバクで、心の蔵が口から飛び出す程だ。
「遂にって感じね。折角メルアドゲットしてるんだし、メールで告ればよかったのに、何故ラブレター?ま、原始的で、あんたらしいけどさ」
愛はそう言うと、「報告待ってるわよ」と、口添え、急いで彼氏のもとへと駆けて行った。
最近残業続きの愛は、久しぶりのデート。今朝意気込みを伝えると、何で今日なのよ?と、怒っていた。
きっと、私の一大勝負を見届けたかったんだと思う。
……いや、たんに興味本意かな。
一人残された私は、気持ちを落ち着かせるように、鏡に向かい深呼吸をする。
昨日、一生懸命書いたラブレター。
高橋さんが出勤日な事を確認した上で、私は今朝、紳士服売り場の友人らしき人に、この手紙を渡して貰うよう頼んだ。
手紙には、高橋さんをずっと好きだった気持ちと、返事を今日の仕事あがりの22時に、社員玄関の外で聞かせて欲しいと、指定した。
時期に時計の針が、22時になるのを確認すると、ぺチぺチと、両頬を叩き気合いを入れて、指定先に向かった。