お姫様と若頭様。【完】
暫く飯塚はフリーズした後、
漸く我に返ったのか、
「…んの、バッカ野郎!!」
そう言って俺の肩を叩いた。
まぁこいつの言うことを無視して
こうやって勝手に飛び出したのは俺だし
…今回だけは許す。
だがこいつもそこまで馬鹿じゃねぇ。
俺のことを理解してか、
諦めたように軽く笑った。
「も・ち・ろ・ん、
覚悟は出来てんだろうなぁ?」
そうニヤニヤしながら言った。
そうか…これは戦いの合図か。
そんな飯塚に俺も笑い返す。
そしてー
「あぁ」
俺が頷いたのを合図に二人同時に
相手に向かって走り出す。
相手に背中を任せるのも、
まぁまぁ悪くない。
そう思ったのは俺だけの秘密。
そして俺たちは勝ち、
俺は"本当の仲間"を見つけた。
自分の幾つかの"可能性"を引き換えに。
まぁ将来の可能性なんて
たくさんあるだろう。
…それに可能性なんて
減るだけのものじゃない。
俺がこうしたことでまた、
幾つかの可能性が増えたと思えば、
こんなことなんてきっと、
自分の"汚点"にだなんてならないだろ?
俺たちの出会いは、
柄にもなく"運命"のようだなんて、
そう思ってるのは俺だけじゃない。
『あいつらを見捨てないこと』
それが俺の総長のとしての威厳であり
強くいられる源。